2009年8月3日月曜日

『ヒトラー~最期の12日間~』

映画も、耳からの情報はやはり、舞台になっている国の言葉を聞きながらの方がノリやすい。言葉の意味なんぞわからんでもエエのだ。こっちは字幕を観ているんだから。なんでもかんでも英語でやったらいかん。
と、以前『戦場のピアニスト』を観た時にそう思った。あれもポーランド語メインでやるべきだった。だから例えば、メル・ギブソンが『パッション』を全部ヘブライ語でやったのは、エラかったと思う。(エラいと同時にエグかったけど)。

その点、この映画はドイツ語だから。

私は一番好きな洋画を尋ねられたら、「さ~、色々あるから、むずかしいね」などと、実は『ベルリン天使の詩』なのだとは、あまり答えない。理由は、それで以前映画ヲタの方と論争になったから。
映画ヲタさんは「あの映画はゴミだ。監督のオナニーだ」とまで仰る。私は「何をそんなに前のめりになって観ているのか。もっとリラックスして目と耳で味わわんかい。…!」

『ベルリン天使の詩』はサントラも持っている。私はあの映画で感じた、他にはない余韻が好きなのだ。

で、この『ヒトラー~最期の12日間~』のヒトラーが、『ベルリン天使の詩』で天使・ダミエルを演じたブルーノ・ガンツ。
この直前に観た『太陽』の「昭和天皇=イッセー尾形」と同じく、ブルーノ・ガンツも、話が進むにつれ、だんだんヒトラーに似てくる。最初は「チョビひげのダミエル」にしか見えんかった。
「指導者モノ」のソックリ俳優で、あと思い浮かぶのは、『ガンジー』のベン・キングスレーもな。やっぱり観ていて「似ていないと醒める」というのはある。例えば『チェ』なんか、実物のチェが男前過ぎるから、あとは誰がやっても追いつけない感。


155分。…長!
しかも物語の半ばで、かなり早々とヒトラーは自害して、出てこなくなってしまう。
登場する人物の相関が把握できている人なら観やすい映画だろう。正直、私には「人口密度の濃い地下壕で、ヒトラーと仲間たちがてんやわんや」という安易な印象。
だからといって、見どころが全く無いわけではない。

秘書だか幹部の妻らしい人が家族に宛てた手紙。

「迷いなどない
 崇高な理想が滅ぶのよ
 高貴で美しいすべてのものと一緒に…
 総統亡き後の世界など生きるに値しないわ
 子供たちも同じ
 あまりに哀れですもの
 神も分かって下さる
 死こそ救いなのだから」

と、自分の子供らをも結局は殺して自殺してしまうんだが。
これを観てふと、何気に「崇高な理想」や「高貴で美しいすべてのもの」が、ただの錯覚で、私には取るに足らないもののように思えてくるのだった。「美しい」とか「美学」とか「美意識」ということを目指すのは、どんな形で何をするにおいても欠かせない要素だとは思うにも関わらず。
言葉にはできないが、奇妙な感覚だ。

また、最後に、生き延びた秘書が戦後何年も経ったインタビューで言っていた言葉が、胸に刺さった。これで私の目が覚めてくれればいいと思う。

「若かったというのは言い訳にならない。あの時、目をひらいていれば気づけたのだと」
 

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